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2019-01-01から1年間の記事一覧

『少年時代』トルストイ著、原卓也訳

■他者を意識すること 訳者の解説によると、 トルストイはこの作品の中で少年時代という時期の特色を、「それまで見慣れていたあらゆるものが突然まだ知らなかった別の面を示したかのように、ものの見方がまったく変わってくる」ことにあると説明している。そ…

『恐るべき子供たち』コクトー作、鈴木力衛訳

■無邪気さ エリザベートは着物をぬいだ。姉と弟の間には、何の気兼ねもなかった。この部屋はひとつの甲羅みたいなもので、二人は同じからだの二つの手のように、そのなかで生活し、洗ったり、着物を着たりするのだった。

『アンキャニー 不気味の谷』に寄せて ~読書という体験について~

『アンキャニー 不気味の谷』というのは、AIとそれを作った科学者がAIのテストのために他人を利用する話です。話自体はどうということもなかったのですが、ちょっと考えさせられたので記事にします。 ■本作はなぜ微妙なのか というと、やはり主題がはっきり…

『饗宴』プラトン著

アガトンの家でみんなで飲んでいると、愛についての演説を順番にしていこうという流れになって、いろいろあって最後にソクラテスがすごいいい演説をする話です。みんなの演説が本作の中心なのですが、読んでみて演説を順番にしていってみんなで聞く、という…

『若き人々への言葉』ニーチェ著

■章立てがわかりやすい ニーチェの生涯の思想を五つに分けて、それぞれに説明を付して時系列で配置していて、非常に直感的でわかりやすいです。説明だけを通しで読んだらわかった気になるし、中身を読む前に説明を読むことで準備ができていいと思います。基…

ホラーというジャンルについて

ホラー映画が好きでよく見るのですが、ホラーというジャンルはかなり作るのが難しいだろうなあ、と、見てて思います。 ■ホラーを構成する2要素 ホラーと呼ばれる作品を考えた時、どの作品にも共通して二つの側面があることは、割と明証的に知れると思います…

『雁』森鴎外著

■不健康な人たち 登場人物の心象風景が、普通の人たちの病的な心の側面を拡大したかのようなものが多く、作品全体に非常に危うい印象を与えていると思います。 とうとう一週間立っても、まだ娘は来なかった。恋しい、恋しいという念が、内攻するように奥深く…

『方法序説』デカルト著、小場瀬卓三訳

世界史の教科書に載るレベルの有名なやつです。有名な考えるゆえにわれありを生で見たいというミーハーな動機から読み始めた本書でしたが、哲学書の中では非常に読みやすかったです。 ■仮の格率 デカルトは真理を探すために疑えるものはすべて疑っていました…

『幸福論』ヒルティ著、草間平作訳(3/3)

■信仰について 本書を読んで一番強く感じたのがこの信仰に関することを考えないといけない、ということでした。まず、本書における神、信仰は哲学の対立概念です。哲学が古代から近代にいたるまで、人々が求める疑問への回答を提出出来ていないこと、に触れ…

『幸福論』ヒルティ著、草間平作訳(2/3)

■ストア派 続きです。 サラダはどれほどで売られるか。多分1グロッセンぐらいであろう。さて今、ある人が自分のもっている1グロッセンを支払って、その代わりにサラダを得たとする。君は金を手離さず、何物も得なかったとする。しかし、きみはその人よりも決…

『幸福論』ヒルティ著、草間平作訳(1/3)

■仕事 最近仕事のことでツキが回ってきて、機嫌よく仕事をしているのですが、そんな中幸福論と題された本作の第一章が仕事の話題で、共感するところが少なくなかったです。 ひとの求める休息は、まず第一に、肉体と精神を全く働かせず、あるいはなるべく怠け…

『FRANK -フランク-』

コミカルな設定とテイストを持ちながら、人間の中の社会的な部分と反社会的(犯罪的な意味ではなく理屈を超えているという意味で)な部分の境界を問うた重厚な作品だと思います。

『魔女と呼ばれた少女』に寄せて ~感動の分類~

『魔女と呼ばれた少女』というのは、映画のタイトルで、簡単に言うと内戦が続くアフリカのどっかの国で、ひどい目に遭う少女の話です。某サイトの評価が非常に高かったので観たのですが、自分的には微妙でした。その所感に至った理由をあれこれ考えるうちに…

『蠅の王』ゴールディング著、平井正穂訳

無人島に不時着した子供たちが、集団生活を企図しますが破綻を来たし、暴力と破壊の中に飲み込まれていく話です。成行で指導者に選ばれたラーフが、救助のために理性的に秩序立って集団を統率しようとしますが、集団は瓦解し、当初の目的が完全に失われるま…

『ナイン・ストーリーズ』サリンジャー著、野崎孝訳

サリンジャーについては、実は以前『フラニーとゾーイ―』を読もうとして挫折した苦い経験がありまして、この度短編集なら何とかなるかと思い今作を手に取った次第です。『フラニーとゾーイ―』については、一見して必要性がわからないような冗長なワードサラ…

『午後の曳航』三島由紀夫著

■読み終わった最初の印象 は、 めちゃくちゃカッコイイレトリックで書かれた悪趣味な前衛芸術 でした。普段海外の文豪の著作の訳書をよく読むので、文豪が自国語で書いた文の威力というのが強烈で非常に印象的でした。

『イソップ寓話集』中務哲郎訳

子供の頃童話の本でイソップの名前を知って、その印象が強かったので、イソップ=童話作家のようなイメージだったのですが、本作を読んでひっくり返りました。男女の情事の話や、動物の話と見せかけた都市国家間のマキャベリズムの話などがあって、またイソッ…

『とぶ教室』ケストナー著、丘沢静也訳

クリスマス前のギムナジウムを舞台に、そこの生徒たちの戦いと友情を描いた作品です。 訳者解説に、 ケストナーは多くの読者に愛され(たから?)、多くの批評家や研究者からうとんじられた。現在もそうだ。読めばわかるから、研究者や批評家の出る幕があま…

『異邦人』カミュ著、窪田啓作訳

主人公のムルソーが、ふとしたきっかけで人を殺し、死刑を宣告される話です。ムルソーは、普通の社会生活を営んでいるように見えます。経済的な事情から親を養老院に入れていること、職場で知り合った女性と恋に落ちたこと、少しアウトローな友人と近所づき…

『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ著、村上春樹訳

カポーティの著作は、この前『冷血』を読みまして、それ自体は取り立ててすごいというわけではなかったのですが、その時にカポーティという作家が有名らしいということを知りまして、古本屋の棚にそのカポーティの作品があったことで手に取ったのが本書です…

『人生論』トルストイ著、原卓也訳

人生全般について論じた本です。本書では人間を動物的基盤の上で生きる理性的な存在と規定し、それに基づいて幸福の在り方や生と死の在り方を論じています。