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エスター

観ました。

 

核心に触れないようにあらすじを言うと、養子を探している夫婦が孤児院で一人の女の子「エスター」と出会います。意気投合してエスターを養子にもらうことに決めますが、一緒に暮らすうちに彼女の狂気が徐々に明らかになっていきます。エスターと対立を深める母親と、エスターに騙されなにかとエスターの肩を持つ夫、そして最終的に破滅的な結末とエスターの戦慄の過去が明らかになる、という映画です。

 

 

全体の感想

としては、すごい怖いです。しかしこの恐怖はよく考えると、心霊的な恐怖というよりは、エスターの術中で味方であるはずの夫にもわかってもらえず、安全であるはずの我が家で自分や自分の大切な子供たちが危険にさらされるというストレスフルな状況が源泉であり、確かに不快な感情には違いありませんが、恐怖というより、「ストレス」と表現した方が適切な感じです。

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ホラー映画というよりは、心的負荷映画

 

息子がエスターに殺されかけた後の病院のシーンでは、やってはいけないとわかってはいてもエスターに手を挙げてしまい、拘束され不利な状況に追い込まれてしまう母親に感情移入しているだけにすごい心的負荷でした。

 

 

絵が怖い

エスターは孤児院の登場シーンで絵を描いていて、家に引き取られてからも絵を描き続けているのですが、その絵がなんとも言えず不気味な印象でした。(この絵には実は仕掛けがあり、物語中盤で明らかになるのですが)静謐で神秘的であると観ることもできるのですが、どこか陰鬱で、悪意の影が見え隠れしているように感じられます。シリアルキラーや精神異常者が描いた絵が持つそれのような独特な雰囲気があって、明確に指摘することはできない説明不能な不安、という意味でエスターの描く絵はエスター本人のメタファーになっているのだと思います。

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本人の心の闇を暗示するかのような不気味な絵

 

エスターの描いた絵に似た世界観を持つ作品としては、『ファンタスチック・プラネット』があります。理解不能性を見事に映像化した、高い心的負荷を誇る名作だと思います。

 

アメリカ映画的な緊張と緩和

そしてラストはアメリカ映画のお約束ともいうべき、家の中にいるエネミーとの極限の戦闘です。丸腰の母親と娘という弱者の代表格が戦いを強いられる構図、瞬殺されてクソの役にも立たないファッキンな夫、全て終わってから満を持して登場するホーリーシットなポリスと、およそお約束違反なところが見つからない素晴らしいお約束でした。

 

作品の舞台設定とシナリオが巧みなお陰でお約束の効果も抜群で、見終わった後の気分の落差と、脳内で様々な物質が分泌されているであろうことが体感レベルで分かる素晴らしいカタルシスを生む結果となっています。

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アメリカ的な緊張と緩和のダイナミズム

 

まとめ

まとめるとこの映画は、

心的負荷とそこからの解放がクセになる素晴らしい作品

でした。