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『読書は一冊のノートにまとめなさい』奥野宣之著

本書は著者の前作、『情報は一冊のノートにまとめなさい』がベストセラーになったことを踏まえて書かれた続編で、読書ノートの作成を奨励しています。本書の真価は1冊のノートにまとめる方法論ではなく、読書家の同氏が自身の読書の仕方を述べたところだと思いました。

 

■感想は引用+感想

 

この感想の構成はなかなか洗練されていると思います。「長々と論を展開する必要はない」「それによって筆が重くなることの方が問題」などの指摘は確かに思い当たる節があります。

論を長々と展開するのはそれはそれで面白いのですが、確かに「読書という活動」からは若干離れた営みなので、読書に一番近い感想ということになるとこの構成がふさわしいと思います。

一番読書に近い部分の感想は「引用+感想」が基本形

 

積読の推奨

本書の積読に関する考え方はかなり合理的です。例えば古典の読み方を論じた個所で、

 

    ・古典を読むコツはズバリ、「面白くなるまで積んでおく」ことです。

    ・いつか波が来てスーッと読め、何年分ものカタルシスがやってきます。

 

のように、積読を自身と読書体験のマッチングを調整する期間として肯定的にとらえていることがわかります。

読書というのは、いやいややったことはほんとに残りません。私も過去に心に残らないことでも重要そうなことは覚えておこうとして、本に線を引いたり、抜き出したりいろいろしましたが、結局印象に残った部分のみに注目するというスタイルに落ち着きました。

この辺の私の本の読み方の変遷については下記記事で紹介しています。

【読書人志望の方へ】本の読み方の紹介 - H * O * N

 

あと「古典が突然面白くなる」という体験も覚えがありまして、私にとってはモーパッサンの作品がそれでした。

『モーパッサン短編集Ⅰ』(著:モーパッサン、訳:青柳瑞穂) - H * O * N

読み始めたときは面白くなくてうっちゃってたのを、何となく続きから読み始めると非常に面白く、続編含めほぼぶっ続けで最後まで読んでしまったということがありました。記憶により鮮烈に残るということもありますがそういうときは読書体験そのものが楽しく刺激的なのが特筆すべき点だと思います。

自分はあまり面白くなくても何となく惰性で最後まで読んでしまうということが割とあって、そういう読み方で古典を読んで、なまじ一回読んで面白くなかったからそれ以降再読もせずに遠ざかってしまうのは結構もったいない行為なのかなと思いました。強制で読んでるわけではないからこそ、面白くなかったらその感情に素直になって一旦積んでおくというのは結構大切なんだと思います。

 

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積読を自身と読書体験のマッチングを調整する期間として肯定的にとらえる

 

■外堀から埋める

古典の読み方として、「外堀を埋める」という方法も紹介されていました。これは、漫画やダイジェスト版であらすじだけを先につかんだり、背景知識を勉強してから古典を読むという方法で、この方法の是非については、

 

    ・ダイジェスト版は邪道だという意見もあるでしょう。しかし、そういう考え方を突き詰めると、ドストエフスキーを読む前にロシア語を学ばなければならなくなります。読書はそんなに了見の狭いものではありません。

    ・急がば回れで、一冊読むより三冊読むほうが簡単なこともあります。

 

という風に論じられています。これはなかなかいいアイディアで、読みたい古典があるけど敷居が高いという読書人共通の悩みの解決の一助になると思います。

 

■まとめ

 

結局本書で有用だと感じた部分は、古典の読み方に関する部分でした。具体的には

読みたくなるまでほっとく

事前知識を仕入れることで読みやすくする

の二点のアイディアが面白いと思います。

 

紹介したのはこの本です↓