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広瀬すず氏の裏方スタッフ蔑視発言に対する反駁

考察しました。

 

構成は以下の通りです。

■いきさつ

■発言に対する考察

■自分の放った矢が自分に返ってくる

--まとめ--

 

 

■いきさつ

 

広瀬すず氏が、照明、録音スタッフの仕事を蔑視する発言をしたとして批判されたということがありました。と言ってもリアルタイムで騒動を追っていたわけではなく、なんかのまとめでだいぶ後になってから見たという程度なんですが、彼女の発言について考えてみましょう。一応まとめられている記事へのリンクを貼っときます。

 

広瀬すずが裏方スタッフ見下す発言で炎上…Twitterで謝罪へ

 

  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

■発言に対する考察

 

まず、重要なのは、この彼女の発言は実は間違ったことは言っていない(一般大衆からの人気を獲得することが仕事の一環である女優という立場を考えれば、テレビ出演の際に言うべきことではなかったですが)ということです。何か映画を作るとき、照明さん、音声さんが一人いないのと、広瀬すず氏が一人いないのとでは作品に対するダメージが違います。それぞれの仕事における技術の向上した時、照明さんならより効果的に照明を当てる、音声さんなら効果的に音を拾う、広瀬すず氏の場合演技を上手くなる、よりかわいくなる、といったそれぞれの方向性において技術向上の努力をすると思いますが、作品の魅力にダイレクトにかかわってくるのは間違いなく広瀬すず氏の技術向上であるだろうことが予想できますし、そういう予想に基づいたうえでの発言だったのでしょう。

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映像作品において、女優の役割が裏方スタッフの役割よりも重いことは一面の真理

 

そういうある種の正しさはあるのですが、この発言はやはりするべきでなく、さらにまたこの思想も持つべきではないと思います。

 

  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

■自分の放った矢が自分に返ってくる

 

これは、ショーペンハウアーの著書『幸福について―――人生論』に出てくる言葉です。確か何かを批判することに対する意見のような文脈で出てきたと思うのですが、広瀬すず氏の発言にもこれが当てはまります。先に述べたように広瀬すず氏は確かに裏方スタッフに比べると映画に多大な貢献をしているでしょう。しかし共演しているほかの女優や俳優と比べるとどうでしょうか。必ずしも広瀬すず氏が最も優れた働きをしているというわけではなく、広瀬すず氏よりも作品に多大な貢献をしている人がいる場合も多くあるでしょう。また芸能界、映像作品の業界全体ということを考えたときに、広瀬すず氏が最も貢献しているプレイヤーだということは言えるでしょうか。それも言えません。広瀬すず氏よりも演技力や美貌の点で勝っている人は多くいるでしょうし、また彼女が全力で努力しても、日本一の女優、当代一の女優になれる確率は低いでしょう(その辺の公算は自分が一番よくわかると思います)。もし広瀬氏が自信家で、自分は努力によって必ず日本一の女優になるし、ゆくゆくは世界一にもなって見せる、と言えたとして、10年20年後を考えたときにその地位を維持できるかと考えると、これは合理的に考えてできませんし、これをできるというのは自信というよりも蛮勇というものです。

 

広瀬氏よりも作品に貢献している人が広瀬氏を見たときに、同じように「なぜもっと作品に貢献する方法でもって仕事をしないのだろう」と考えるかどうかはわかりませんが、少なくとも広瀬氏は、このとき照明さんや音声さんを蔑視したのと同様に自分をも蔑視することになります。これがこの思想の恐ろしいところであり、表題の「自分の放った矢が自分に返ってくる」の意味なのです。

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自分より優れた働きをしている人が、自分を蔑視していると感じてしまう

 

別に広瀬氏ディスをしているわけではなく、こういうことは広瀬氏に関する一般的な事実であって、他の女優、俳優に関する一般的な事実でもあります。映画でいえば、だれだって自分の役割を間違いなくこなすことで映画にそれなりの貢献をしているわけです。裏方の照明さんも音声さんも、広瀬すず氏も、広瀬すず氏よりもいい演技いい笑顔の俳優さん女優さんもみんなそうです。彼らの働きに貴賤はありません。広瀬氏の演技も、広瀬氏より美人で演技の上手い女優の演技も、作品への貢献度に違いはあれど作品の一部になっているという意味では等価なのです。この発言の広瀬氏はそのことがわかっていなかったということです。

 

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--まとめ--

 

批判や悪口というのは、暇つぶしにはもってこいなのですが、長期的に見て発言者のメンタルに多大な影響を及ぼし、発言者は自分の発言に縛られ、あるいは責め苛まれ、人生の重荷となることがわかります。ちなみに僕は広瀬すず氏出演の『海街Diary』が地上波初放送されたときにこれは是非見ようと思って録画予約し、録画を楽しみにしながら帰宅してみると録画失敗してて見れませんでした。

 

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■関連する作品

 

今回言及した作品はこちらです。

 

 

広瀬氏にお勧めの本は『こころの処方箋』(河合隼雄著)『イン・ザ・プール』(奥田英朗著)の二冊です。人を蔑視するというメンタリティは先ほど述べたようにあまり健全とは言えないので、『こころの処方箋』を熟読され、御自身の心の安定に資されるのがいいと思いますし、『イン・ザ・プール』は強迫観念に悩む人々が自身の暴走しがちの心と折り合いをつけていく話が多く収録されているので、読み物として心安らげることと思います。

 

 

 

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