『しゃぼん玉』乃南アサ著
本読みました。
『しゃぼん玉』乃南アサ著
以下感想です。
■あらすじ
■みどころ
■あまりに叙述的
--『しゃぼん玉』まとめ--
■関連する作品
■あらすじ
自暴自棄になりその日暮らしのための犯罪を繰り返す主人公「翔人」が、とあるきっかけから田舎の村で暮らすことになり、食事や仕事をしていくうち自戒の念を抱き、更生を決意する話です。
■みどころ
翔人は村の人々からのわけ隔てない親しみに触れて、頭ではめんどくさいと思いながらもなぜか素直に従ってしまい、いつしか村中から立派な若者として頼りにされていきます。愛に飢えた主人公が愛に触れ生きていたいと願うようになる様は紋切り型の人情モノといった趣があり、予想通りの感動があります。しかし主人公を受け入れる村「椎葉村」の人々が、少しもご都合主義的ではなく、きちんと血の通った登場人物として描かれているのは作者の力量だと思います。
紋切り型の人情モノ
■あまりに叙述的
つまりありのままの事実や状況を述べることに終始しすぎているということです。ストーリーとしての起伏はあるのに、まるで一犯罪者の更生に至るルポルタージュを見ているような気分になります。あるいはそれが作者の意図なのかもしれません。最初八方ふさがりだった主人公に、小説としての架空の救済を与えるのではなく、あくまで現実と地続きの領域において、自分の行為に自分で落とし前をつけさせて、更生という現実的な救済を示したことで、人間の持つ可能性が強調されたと考えるとそれはもっともだと思います。
現実的な解決策が、本作を地に足ついた人間再生の物語にしている
--『しゃぼん玉』まとめ--
好意的に解釈すれば、この作品は、
現実的な描写に徹することで、八方ふさがりに見えた主人公の人生にもやり直しのチャンスがあることを示す
そんな作品です。
■関連する作品
今回紹介した作品はこちらです。
人情モノということで関連する作品は「東京ロンダリング」(原田ひ香)、「虹の岬の喫茶店」(森沢明夫)の二冊です。特に東京ロンダリングは、心を閉ざしてしてしまった主人公に町の人たちがおせっかいなかかわり方をして最終的に心を開くという内容なので本作とよく似ています。虹の岬の喫茶店は、喫茶店のマスターと客の間の触れ合いを描くもう少しライトなテイストのものです。