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『少年時代』トルストイ著、原卓也訳

■他者を意識すること 訳者の解説によると、 トルストイはこの作品の中で少年時代という時期の特色を、「それまで見慣れていたあらゆるものが突然まだ知らなかった別の面を示したかのように、ものの見方がまったく変わってくる」ことにあると説明している。そ…

『恐るべき子供たち』コクトー作、鈴木力衛訳

■無邪気さ エリザベートは着物をぬいだ。姉と弟の間には、何の気兼ねもなかった。この部屋はひとつの甲羅みたいなもので、二人は同じからだの二つの手のように、そのなかで生活し、洗ったり、着物を着たりするのだった。

『アンキャニー 不気味の谷』に寄せて ~読書という体験について~

『アンキャニー 不気味の谷』というのは、AIとそれを作った科学者がAIのテストのために他人を利用する話です。話自体はどうということもなかったのですが、ちょっと考えさせられたので記事にします。 ■本作はなぜ微妙なのか というと、やはり主題がはっきり…

『饗宴』プラトン著

アガトンの家でみんなで飲んでいると、愛についての演説を順番にしていこうという流れになって、いろいろあって最後にソクラテスがすごいいい演説をする話です。みんなの演説が本作の中心なのですが、読んでみて演説を順番にしていってみんなで聞く、という…

『若き人々への言葉』ニーチェ著

■章立てがわかりやすい ニーチェの生涯の思想を五つに分けて、それぞれに説明を付して時系列で配置していて、非常に直感的でわかりやすいです。説明だけを通しで読んだらわかった気になるし、中身を読む前に説明を読むことで準備ができていいと思います。基…

ホラーというジャンルについて

ホラー映画が好きでよく見るのですが、ホラーというジャンルはかなり作るのが難しいだろうなあ、と、見てて思います。 ■ホラーを構成する2要素 ホラーと呼ばれる作品を考えた時、どの作品にも共通して二つの側面があることは、割と明証的に知れると思います…

『雁』森鴎外著

■不健康な人たち 登場人物の心象風景が、普通の人たちの病的な心の側面を拡大したかのようなものが多く、作品全体に非常に危うい印象を与えていると思います。 とうとう一週間立っても、まだ娘は来なかった。恋しい、恋しいという念が、内攻するように奥深く…

『方法序説』デカルト著、小場瀬卓三訳

世界史の教科書に載るレベルの有名なやつです。有名な考えるゆえにわれありを生で見たいというミーハーな動機から読み始めた本書でしたが、哲学書の中では非常に読みやすかったです。 ■仮の格率 デカルトは真理を探すために疑えるものはすべて疑っていました…

『幸福論』ヒルティ著、草間平作訳(3/3)

■信仰について 本書を読んで一番強く感じたのがこの信仰に関することを考えないといけない、ということでした。まず、本書における神、信仰は哲学の対立概念です。哲学が古代から近代にいたるまで、人々が求める疑問への回答を提出出来ていないこと、に触れ…

『幸福論』ヒルティ著、草間平作訳(2/3)

■ストア派 続きです。 サラダはどれほどで売られるか。多分1グロッセンぐらいであろう。さて今、ある人が自分のもっている1グロッセンを支払って、その代わりにサラダを得たとする。君は金を手離さず、何物も得なかったとする。しかし、きみはその人よりも決…

『幸福論』ヒルティ著、草間平作訳(1/3)

■仕事 最近仕事のことでツキが回ってきて、機嫌よく仕事をしているのですが、そんな中幸福論と題された本作の第一章が仕事の話題で、共感するところが少なくなかったです。 ひとの求める休息は、まず第一に、肉体と精神を全く働かせず、あるいはなるべく怠け…

『FRANK -フランク-』

コミカルな設定とテイストを持ちながら、人間の中の社会的な部分と反社会的(犯罪的な意味ではなく理屈を超えているという意味で)な部分の境界を問うた重厚な作品だと思います。

『魔女と呼ばれた少女』に寄せて ~感動の分類~

『魔女と呼ばれた少女』というのは、映画のタイトルで、簡単に言うと内戦が続くアフリカのどっかの国で、ひどい目に遭う少女の話です。某サイトの評価が非常に高かったので観たのですが、自分的には微妙でした。その所感に至った理由をあれこれ考えるうちに…

『蠅の王』ゴールディング著、平井正穂訳

無人島に不時着した子供たちが、集団生活を企図しますが破綻を来たし、暴力と破壊の中に飲み込まれていく話です。成行で指導者に選ばれたラーフが、救助のために理性的に秩序立って集団を統率しようとしますが、集団は瓦解し、当初の目的が完全に失われるま…

『ナイン・ストーリーズ』サリンジャー著、野崎孝訳

サリンジャーについては、実は以前『フラニーとゾーイ―』を読もうとして挫折した苦い経験がありまして、この度短編集なら何とかなるかと思い今作を手に取った次第です。『フラニーとゾーイ―』については、一見して必要性がわからないような冗長なワードサラ…

『午後の曳航』三島由紀夫著

■読み終わった最初の印象 は、 めちゃくちゃカッコイイレトリックで書かれた悪趣味な前衛芸術 でした。普段海外の文豪の著作の訳書をよく読むので、文豪が自国語で書いた文の威力というのが強烈で非常に印象的でした。

『イソップ寓話集』中務哲郎訳

子供の頃童話の本でイソップの名前を知って、その印象が強かったので、イソップ=童話作家のようなイメージだったのですが、本作を読んでひっくり返りました。男女の情事の話や、動物の話と見せかけた都市国家間のマキャベリズムの話などがあって、またイソッ…

『とぶ教室』ケストナー著、丘沢静也訳

クリスマス前のギムナジウムを舞台に、そこの生徒たちの戦いと友情を描いた作品です。 訳者解説に、 ケストナーは多くの読者に愛され(たから?)、多くの批評家や研究者からうとんじられた。現在もそうだ。読めばわかるから、研究者や批評家の出る幕があま…

『異邦人』カミュ著、窪田啓作訳

主人公のムルソーが、ふとしたきっかけで人を殺し、死刑を宣告される話です。ムルソーは、普通の社会生活を営んでいるように見えます。経済的な事情から親を養老院に入れていること、職場で知り合った女性と恋に落ちたこと、少しアウトローな友人と近所づき…

『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ著、村上春樹訳

カポーティの著作は、この前『冷血』を読みまして、それ自体は取り立ててすごいというわけではなかったのですが、その時にカポーティという作家が有名らしいということを知りまして、古本屋の棚にそのカポーティの作品があったことで手に取ったのが本書です…

『人生論』トルストイ著、原卓也訳

人生全般について論じた本です。本書では人間を動物的基盤の上で生きる理性的な存在と規定し、それに基づいて幸福の在り方や生と死の在り方を論じています。

夢のクレヨン王国

この作品は、1997年-1999年にかけて放映されたアニメです。 夢のクレヨン王国 - Wikipedia オープニングとエンディングが印象的なので名前は憶えていなくても聞くと思いだす人もいるかと思います。 夢のクレヨン王国OP「ン・パカ マーチ」徳光由香・東京少年…

『城』フランツ・カフカ著

■あらすじ・みどころ 測量士として仕事を依頼されやってきた「K」が、当地の決まりや手続きに翻弄されて、ついに職務に就けずに、測量士としての本領を発揮できない話です。測量士として働こうとする中でKは、依頼者である『城』との交渉を絶えず試みますが…

やさしい『Amazon music unlimited』30日間無料体験のはじめかた

本日は、amazonが提供しているサービス Amazon music unlimitedの30日間無料体験の始め方 を解説します。読書のお供にどうぞ。 読書のお供に、Amazon music unlimited。

『わかる!!わかる!!わかる!!小論文&作文』坂東恭一著

■要するに 小論文を書く機会があり、読みました。一応小論文一般の参考書ということになっていますが、著者の経歴が出版社→新聞社→フリージャーナリストということで、かなり出版・マスコミ業界に特化した内容で、他の業界の選考ではまれな三題噺や、抽象的…

『微笑がえし』阿木燿子作詞

先日友人に上記の曲を進められたので、聞いてみたところ非常にすばらしい曲でした。 微笑がえし - YouTube この曲は主人公の女性である「私」と、付き合っていた彼氏の「あなた」が、同棲していた住まいを引き払う話です。周囲の人たちから引っ越し祝いをも…

【意味】『道徳形而上学原論』カント著【不明】

深秋の候、皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。年がら年中読書をしていますが、読書の秋、ということで、この時期、深まる秋の空気を感じながら喫茶店などに出向いてのんびり読書などするのもまた格別な趣がありますね。 こちらは、…

推理小説を読まない理由

趣味は読書と称して憚らない私ですが、読まないジャンルがあります。 推理小説 です。特にミステリーが嫌いで読まないというわけではなく、何となく選ぶ本の中に推理小説が決まって入っていないということなのですが、この無意識の本のセレクトの中に、私の…

秒速五センチメートル

■要するに 読者様各位 新年あけましておめでとうございます。 2018年1月3日の『君の名は。』地上波公開に先立って、新海誠氏が手掛けた過去作品が地上波でいくつか放送されており、本作はそのうちの一つとして放送されたものです。この作品は過去に見たこと…

『変身』(カフカ著)解説

参考にするのは下記の論文です。 フランツ・カフカの『変身』について 一「虫」の大きさの考察一 ■要するに この論文では、作中の主人公が変身してしまった「虫」の大きさが場面によって伸縮していると指摘し、虫の体長はの大きさは、主人公と社会のつながり…