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【続】『「友達いない」は"恥ずかしい"のか』著:武長脩行

 

■要するに

この本は、今年の六月ぐらいに読んで当ブログで感想を書いた本です。その時の記事はこれ↓で、内容をざっくりいうと、

『「友達いない」は"恥ずかしい"のか』著:武長脩行 - H * O * N

・「孤独」という状態は、社会から個人へのネガティブな働きかけの一形態である

・何らかの行動を起こした行為主体に対して、社会が甲斐であると判断した場合、その行為主体を排斥するために孤独という措置がとられる

・孤独という状態を経験することは、何か行動を起こすときに、そのリスクを正しく見積もることに資する

・多くの人は孤独の恐怖を過大評価して、多くのことを諦めて生きているように見える

こんな感じです。そして別の機会に「友達いない、は恥ずかしいのか」という、本書のタイトルにして本書では明確な答えが与えられていない問いを考察すると言って締めくくられています。今回はこっちの考察をしてみたいと思います。

 

友達いない、は恥ずかしいのか

 

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『冷血』カポーティ著、佐々田雅子訳

■要するに

実際にあった一家四人の惨殺事件を題材にした作品です。徹底した取材と膨大な資料を基に物語を構成するニュージャーナリズムと呼ばれる手法で書かれた、筆者曰くノンフィクション・ノヴェルであるところの本書は、実話であるが故の荒唐無稽さ、些末さといったものが実話としての重みをもって読者に伝わる、なかなか読み応えのある作品だと思います。特に訳者があとがきにて指摘している通り、犯人や被害者、捜査官、隣人など、ほとんどすべての登場人物の家族との絆に意図的に焦点を当てることで、物語に非常な厚みが、少なくとも多大なページ数を費やしただけの厚みが出ていると思います。冒頭では被害者の家族の生活が事細かに描かれ、彼らの突然の死と、のちに語られる事件の克明な全容をより一層印象的にすることに成功しています。

 

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長いけど実話故の読み応え

 

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『朗読者』ベルンハルト・シュリンク著、松永美穂訳

■要するに

少年である主人公が、年上の女性「ハンナ」と行きずりの肉体関係を持ち、彼女との生活の幸福、その破綻が主人公の心象に拭い難い強烈な印象を残す話です。これだけだと悲恋風の普通の恋愛小説なのですが、この作品では主人公とハンナを媒介する要素として「ナチ政権」が出てきます。主人公は戦後のナチ政権をめぐる裁判を通してハンナと再会することになりますが、その再会の経緯がこの作品に独特なカラーを与えていると思います。

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戦争が深い影を落とす悲恋

 

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サバサバ系について

サバサバ系、という概念があります。これは主に女性の性格を形容するときに使用される言葉で、ざっくりいうと女子っぽくない、男っぽい性格を表現する言葉です。世間に目を向けると、この概念が濫用されていることがわかります。試しにインターネットで、お手元のブラウザの検索窓に「サバサバ」と入力していただくと、たちどころに下記二つの記事がヒットします。

うざい!と話題「自称サバサバ系女子」とは?

 

サバサバ女子の特徴って?男ウケ抜群の「モテ女」パターン6つ

 

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『マーク・トウェイン短編集』古沢安二郎訳

最近海外文学の短編集に凝ってまして、この本はその一環として読みました。マーク・トウェインと言えばトム・ソーヤーの冒険が有名ですが、私は過去に一度読もうとして挫折しました。平たく言うと無駄に長かったからだと思います。その点これは短編集なので、一つ一つの話の切れ目が明確なのでダラダラ長くなることがなく、しかもトム・ソーヤーの冒険にみられるようなユーモアや滑稽さで暗示される真理の描写が随所にあって非常に機嫌よく読むことができました。

特に面白かったのは、『私が農業新聞をどんなふうに編集したか』『エスキモー娘のロマンス』の二編です。

 

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『読書は一冊のノートにまとめなさい』奥野宣之著

本書は著者の前作、『情報は一冊のノートにまとめなさい』がベストセラーになったことを踏まえて書かれた続編で、読書ノートの作成を奨励しています。本書の真価は1冊のノートにまとめる方法論ではなく、読書家の同氏が自身の読書の仕方を述べたところだと思いました。

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