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誰に育ててもらってると思ってるんだ

先日、興味深いまとめを見ました。

子供の頃親と喧嘩してると良く「誰に食わせてもらってんだ!」とか「誰に学費払ってもらってんだ」言われたけどさ - アルファルファモザイク

 

■あらすじ

 

ざっくりいうと、タイトルの言葉を親から投げかけられて嫌な思いがしたし、親としてこれは言っちゃいけないだろうという1にみんなが同意する話です。こういう言い方で議論を終わらせてしまうと子供の方に納得がなく、親に対する不信感が募ると思いますが、タイトルの発言はどういう気持ちで発されるのでしょうか。そこのところを考えてみようと思います。

 

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おおかみこどもの雨と雪

この作品は、細田守監督の作品で、彼の時系列から言えば『サマーウォーズ』と『バケモノの子』の間に発表された作品です。それらの作品と比べると本作は細田守氏の良さがしっかり出ているいい作品であると思います。私の思う彼の良さとは、彼の描く家族観、家族愛に対する彼の見方が非常に洗練されている点で、例えばそれはバケモノの子における熊鉄と九太の関係、多々良、百秋坊と九太の関係にその片鱗を見て取ることができると思いますが、本作はそのままド直球に家族愛を描いた作品ですので、上記のような所感になるのも当然だと思います。

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細田守氏の優しい家族観がよく出ているいい作品

 

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五月の処刑

ふと気がつくと、どうやら実家の庭に立っていた。季節は春から夏の間、5月頃かと思われ、晴れた空から明るい日差しが降り注いでいて、眩しさに目を細めて、あたりを見回した。庭の真ん中には何人かの兵士がいる。みんな薄い緑の軍服を着ていて、雑兵は黙って直立して、随分と若い将校、彼の帽子は他の兵士と違った形をしていたから、私はきっと彼の地位が高いと思ったし、事実彼がその場を取り仕切っているように見えた、が、「あなたは反逆の容疑で処刑されることになりました」と告げた。彼はその詳細を、私の高校の同学が同様の罪で処断されたこと、同学を捜査する中で私が高校の時に書いた何かの文書が目に止まったこと、などで説明した。彼は続いて束ねられた紙を差し出して、受け取ってみると、私の同学が書いたと思しき反戦ビラや、声明文のような書類の中に、なるほど私が高校の時に書いた文章が混ざっている。こんな形で取り沙汰されるとは知る由もなく、自由にのびのびと、極めて無責任に書かれている。私は文章の取り合わせがやや間抜けであると感じ、また先の宣告の衝撃に数歩後ずさり、ガレージの柱に寄りかかってかろうじて立っていた。「処刑は銃殺にて行います。バルカンで一瞬だよ」と若い将校が宥めるように言った。

 

私はどうすることもできずに立ったまま、後ずさった時の衝撃が、まず脱力感のような悲しみへ、次いで痛みに対する恐怖と動揺へと、変わっていくのを感じた。一呼吸遅れて、父母や家族、恋人との別れが避け難く迫っていることの無念が私を襲った。母は家族を、とりわけ私と私の兄弟を愛しているから、さぞ悲しませてしまうだろう。彼女とは結婚の約束をしていたが、約束を破ることになってしまった。実家に帰った折に両親と会うこと、恋が終わっても一緒にいること、そんな当たり前で平凡で、当然過ごすものと思われた日常が、にわかに懐かしく輝きだし、それがもう手に入らないと思うと、悔しさで一杯になった。

 

私は彼らに手紙を書かないといけない、と思ったが、処刑の前に手紙を書く十分な時間はもらえないだろう。みんなに一言言うだけで精一杯に違いない。とにかく時間を作らなければ、そう思い、「トイレに行かせてくれ」と言った。若い将校はこちらを見ずに、タバコに火をつけながら、「いいよ」と短く答えた。

 

どうやって庭からトイレまで移動したかは覚えていないが、私は実家のトイレに入っていた。生まれた時から見るとはなく見た青いタイル張りの床、小さい窓、狭い個室にひとつきり置かれた便器に腰掛けている。床を見ると、お菓子の包み紙が散らばっている。きっとこれは父の仕業で、再三注意しているのに、また今度会ったときに注意しなければ…。

 

『心が叫びたがってるんだ』

拝啓、読者諸賢におかれましては、性の喜びをお知り遊ばされていることと、御恨み申し上げます。

 

昨日実写公開記念として地上波初放送された上記作品は、アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(略称「あの花」)のスタッフが再集結して製作されたものです。「あの花」は魅力的なキャラクターと神秘的なシナリオ、美麗な映像が魅力の良作ですが、やはり本作も実績あるスタッフによる安定感が感じられる素晴らしい出来でした。

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読書家の私が言われた悪口ベストスリー

■叩かれる

 

拝啓、盛夏の候、皆様におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。人によっては意外な事実かもしれませんが、

読書してると、割と叩かれます。

面と向かって批判、罵倒してくる場合ももちろんありますし、奇異の視線、物珍しそうな問いかけ、ということになると、もう枚挙にいとまがありません。読書ほど人と社会に迷惑をかけない趣味もそうないと思いますが、世の中には読書している人を見るのが気にくわないという人がいるみたいです。今日は過去に言われた悪口をランキング形式で取り上げ、それぞれに分析を加えてみようと思います。

 

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ブクマ!の簡単な蔵書の出品について

たびたびすいません!本専門のフリマアプリ「ブクマ!」の記事です。興味ない人、すでに持っている人におかれましては、御目汚し失礼します。誠に申し訳ありません。

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『読書について』(著:ショーペンハウエル、訳:斎藤忍随)

本読みました。『読書について』(著:ショーペンハウエル、訳:斎藤忍随)

■総評

読書という営みそのものへの興味は、読書家に共通のものだと思います。日本人は幼いころから読書をすることが教育的に(学校教育への寄与という点において)善とされている風土で育っているので、読書をするときの自意識として、「寸暇を惜しんで本を読んでるぼくちゃん偉いダロ」的な感情が多かれ少なかれあることは確かだと思いますが、そんな人にとっては本書はかなりショッキングというか、パラダイムシフトな内容になっていると思います。

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読書家の驕りを戒める本

 

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